「共生」の時代ではない。
新潟県の熊の生息調査、保護計画のエリア分けは3つに分かれます。村上山北山形に跨がる「月山朝日飯豊ユニット」、長岡から南に向かい、群馬栃木福島長野県境に跨がる「越後三国ユニット」、上越から富山長野北部から岐阜までの「北アルプスユニット」です。僕が馴染んでいるのは「月山朝日飯豊ユニット」のごく一部な訳です。
僕個人としては、こうしたエリア、ことさら山間部の集落や山間付近の市街地の人間界と、本来は山間部に留まっていて欲しい野生動物との「共生を目指して」と云う考え方は、そうした地域に暮らす住民の肉体的物理的安全と精神的安定を最優先にする為には「共生」ではなく「分生」を目指すべき時だと思います。
素直に云えば、もう何年も昔からそうした地域では猿や熊等との「共生」を強いられて来た訳で、都市部や外部で獣害に真に悩んだ生活経験の無い頭でっかちの人達の「自然との共生を」と云うスローガンなど、僕なら「おこがましい、既に共生などしているわ」と感じます。 むしろ、在野には地域の野生動物の出没傾向や地点、住宅地域への移動ルートなどを的確に推測する力を持った人達が「学者」や「研究サークルの学生」以外にまだまだしっかりいるはずですから、そうした人達の「より実行力のある実践的な、より低コストで」施工可能なプランで、野生動物達の棲息・活動・出没地域と、人間の暮らす地域をキッパリと分ける努力を、地域自治体と地域住民の協力で実現すべきだと考えています。
今はまだ新潟では、熊の棲む森や山をどう捉えたら良いか分からない時だと思いますが、都会に暮らすナチュラリストやアウトドアマンから見たら、そこは本当の豊かな自然が残っている場所です。野生動物と人間は分生する。 そして、野生動物のいる世界に「熊や猿、蝮がいる」と云う意識と警戒心を持って入山遊山したり、野生動物の新しい痕跡や姿そのものをガイドしてもらえる機会があるなら、東京から新潟なんて近いものですし、新潟への新しい来客がまた起こって来ると僕は思います。ゲージから放たれたトキよりも、野生の猿や熊と安全に遭える機会の方が感動は大きいはずです。知床に行くよりも遥かに近いし短時間ですし。こうした山間地域の近くには素敵なお宿、快適な温泉施設も沢山あります。新しい視点を持った人達に遊びな来てもらえる。その為にはなんとなくグレーゾーンの広い「共生」ではダメ、誰も「なんとなーく猿の出るとこ」「なんとなーく熊の出るとこ」で、野生動物を見たいと考えません(僕はそれでも見たいですよ。心底好きなので)。しっかりと線引きのされた「分生」が必要だと思います(これはまず地域住民の方々の為です)。その上で、棲息数過剰で出没が多すぎるなら、撃つべき時は撃つ。断固とした姿勢も必要です。野生自然への意識もない、確固としたプランもない。これでは永遠に獣害は増え続けます。
新潟の美味しい食材は、新潟の豊かな環境と新潟人が生み出します。豊かな環境の中には熊や猿も暮らす訳です。なんとか知恵を絞って、そうした環境を生かしたいですね。
写真は昨日の平林城址の端の古い杉林です。
下の沢にはノミズが群生しています。 おばあちゃんが熊避けにラジオをガンガン鳴らして山菜を採っていました。ベア・カントリー内では朝まずめ夕まずめの活動を避ける、人間の存在を積極的に知らしめる、を実践していた良い光景でした。
市街地の人に見てもらいたい光景でした。