ベア・カントリーへようこそ。
「増えた、間違えなく増えた」と、僕が山で尋ねた老人は言った。
今日は山に入ったのは11時前でもう陽が高かったのと暑かったので、今日は獣に会えない予感がしていましたし、その通りだったのですが、山に入りたかったので行きました。それなりに熊痕を見つけ収穫はあったのですが。
(場所を変えよう)と車で山を下る道の途中で、自転車を押し下る老人のご主人(自家製梅干しの為に今が旬の梅を集めに来ていた)に会い、挨拶を交わし熊の話を聞きました。
「熊は増えましたか」と尋ねた僕にご主人が答えたのが冒頭の言葉です。方言が僕には強くて、申し訳無くも話の3分の1が理解出来なかったのですが、老人は「昔は山ん中に幾つか営林署があって、まだ電気ガスが通ってねから、村の人間で生活資材を運ぶんで山入ったのさ。そん頃は人が沢山山入ったし熊やカモシカ猿なんて出なかったんだ。今は山に人行かねえし、ブたねえから(ブツ=撃つ)熊もカモシカも増えて、下(集落付近)に降りてきちまう。ほら、4月に襲われたろ(4月26日の熊襲撃による小池トシさん死亡事件)。猿なんか昔はいなかったのに、今じゃすげえ群れであっちこっち行ってるんだ。」 僕が「今日も熊を見れなかった」旨を話すと、老人はニッコリしながら「見つけようとすると熊には遭えねえな」と完全正解を言われました。「夏はダメだ。食べ物あるから上(山の奥)行くんだ。まだ食べ物ねえ春先に下降りてくんだ。カモシカなんかせっかく育てた百合の茎みんな喰っちまうよ。熊も色々喰うし、行政は(獣害)補償なんかしねぇから自分達で罠(ドラム缶式捕獲罠)で捕るよ。捕ったら射ってもらうんだ。自分達じゃ射たんな。銃免許ねえしな。村上の猟友会の人に来てもらってな」との事。
僕が「ご主人は山で熊を見た事は?今日みたいに1人で怖くないですか?」と尋ねると、「見た事ねぇ。怖くねえなぁ」との事です。 今まで畑で会ったお婆ちゃん達は「熊出るからこわい」と言ってたので、個人差があるようです。
そうか。
夏が深まると熊は山を上がるのか。いい事を教わった。