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(2014-6-19)

熊の冬眠穴の近くには。

自分の周囲に細心の注意と警戒を張りながら、この山の佛穴(風穴)まで登る。
思い出しても緊張するが、人の気配は全く無く、胸の高さにしじゅうクモ糸が張っている。それなのに下は何かが歩き、踏まれた跡が山の上へ続く。
最近ここを歩いたのはタヌキ、アナグマ、キツネ、テン、カモシカ、それと熊くらいか。
斜面の途中、小さな沢筋を挟んだ向かいの深い笹薮の中に立つ木の根元近くと中間に不自然な皮の剥がれた痕があるのに気付き撮影した。
僕の学習した限り、こうした痕(木の根元近くの皮剥ぎ)は、熊が冬眠穴の近くの標として付けるもので、マタギ達の知識に則るなら周囲20〜30m内に熊穴があるそうだ。だからマタギや熊撃ち達は秋にこの標を探し、次に熊穴を見つけておき、早春に冬眠明けすぐの熊を撃った。すると熊の胆は最大限に大きくなっており、熊の胆の価値、熊の換金額も最高級だったそうだ。滅多に夏に熊は撃たないようだ。第一、山が緑に隠される夏に緑に隠れた熊を見つけるのは難しい。
ただ、熊は冬眠穴は1度使うと翌冬どころか10年近く使わないそうなので、この木の周囲に冬眠穴があったとしても、最近使ったものかまでは肯定出来ないな…と考えながら、この木と笹薮斜面を見ていた。




(2014-6-19)

ベア・カントリーへようこそ(第4回熊フィールド調査)。

今日は、要害山だけに集中して熊痕を追ってみようと決めていた。 先々週この一帯を調べた時に、ここが最も林道(と言っても、最近はほぼ使われた形跡が無く、路の上にクモの糸が張っている)周辺にまで熊痕が残っていて、熊密度が高いように感じたからだ。村上の家を出て迷わず山腹へ車を走らせた。
夏の力強い薮が狭い林道上に両側からせりだしている為、車をいつもピカピカにしときたい方なら悲鳴を漏らすような音と反応で、薮草がエクストレイルの側面をガリガリ、バシバシと叩く。こんな路を通る時、いつもジムニーか4WD軽トラ に乗るべきだ…と思う。
さて、車停め近くまで上がって来た。 フと、林間に右手に上がる未舗装の小道に違和感を感じ目をやると、森の僕のお気に入り、可愛いアナグマが「うんしょ、うんしょ」と頭を上げ下げしながらこちらに向かって歩いて来る。車を停め、(降りて写真を撮るべきか、それとも車内からにするか)と迷いながら、やはり降りてみたら、途端に向きを変え、平たく丸っこい尻尾をフリフリしながら林間に去って行った。
撮影出来なかったのは残念だが、山に入ってすぐ獣に遭えたのは幸先が良い。 今日はまだ動物に遭えそうだ…と直感した。
先々週は盛りと膨らんでいたモミジイチゴは弱まり、代わってクマイチゴがバンバンと成っていた。(クマイチゴの盛りは7月からだろう…)と思っていたので少し驚いた。これは文字通り熊達の大好物の一つ。
この周囲にはフキ、筍、熊笹筍、モミジイチゴ、クマイチゴが今は同時に成っている。 熊にとっては最高のレストラン状態だ。
そんな山中を強い緊張感を保って探索する。
勿論、腰に下げた土佐剣鉈は鞘から出して構えながら。
そうして、前回撮影した山中に広がるフキの原に着いた。今回はここで熊のフキの食痕を探す。
ソッとフキ原に入り、奥へ向かう。はっきりした食痕は分からなかったがフキ原の中に突然ポッカリとフキが全て倒れたような直径1m程の丸い痕がところどころにある。 ただの偶然でそうなったのか、熊の寝痕か座った痕か。 場所から見て多分後者だろう。
フキ原を一番奥まで進み熊笹の薮まで来た時、日なたで丸くなって寝ている小振りのマムシがいた。
足場の良くないこんな場所では非常に構え難いiPhoneをマムシの近くに構えて撮影しようとしたら、前の笹薮の中で「ガサガサガサ」と音がして恐怖を感じた。 だが、怖さを感じながらサッとiPhoneを仕舞い剣鉈を抜く。
それ以上音は無い。何の音かは分からない。だが「ほーらほーら」と大声を出し笹薮から距離を取り、フキ原を下った。
僕は今、熊の活動域の真ん中にいるのだ。




(2014-6-19)

ALDANA Cool 3 Riders.