林道の向こうから。
ある林道を進んで行こうと入ってすぐ、ある感覚がサッと来た。
この感覚が来た時、やはり獣が出て来る。
約20m先の轍にパッと、銀灰色をしたカモシカが1頭出現した。 車内の僕と目が合い続ける。 オスと比べやや華奢に見えるので(メスかな、全然逃げないな…)と考えiPhoneをカーゴポケットから抜いて撮影を始めた瞬間に、少し小柄で背中が黒い仔カモシカが現れた。仔カモシカは母カモシカの背後に位置し、僕を見たり後ろの山を見たりしている。
数枚撮影し(少し近づるかな…)と、そろそろエクスを進めると、間もなく林道を横切り森へ消えた。
渓流釣りの最中に何度かカモシカと遭っているが、親子連れは初めてだ。
何となく、母カモシカの愛情を感じた遭遇だった。同時に(この山の熊達は肉の味を知っている。カモシカは熊に襲われている。オレも本当に要注意だ。オレの死骸なんか、3頭の熊が来れば2日ももたずに首から上と足首しか残るまい)と考えた。だから万が一でもそうならないように、何度も転倒から救われたMTBメットとノーズ・ガード付きゴーグル、とバイク用ライト・プロテクターとグローブを装着している。これらが有れば万が一突然初撃を受けてある程度ダメージを受けても必ず剣鉈と共に反撃が出来るし、武器で反撃をすると熊は必ず逃げる事は北海道の羆専門研究者の過去の人身事故データで証明されている。勿論毎日の素振りも欠かしていない。
目当てはこの先にある牙痕の残る木だったので進む。
車から降りると、間もなく向かい斜面から樹間に隠れたサル達が大きく「ケワッ、ケワッ」と警戒音を鳴く。 (目当てはお前らじゃないぜ)と思いながら鉈を振り薮を払い、付近の大きなクマイチゴの薮木に近づき撮影した。
でも皮肉的だ。
(何とか熊を見つけたい)と望んでいるのに当の熊は姿を見せず、他の獣は見れる。
これがこちらが出してしまうオーラなのだろう。
熊以外の獣にはこの「気」は向いていないので、スッと出て来るが、熊には「気」(熊への恐怖と願望が入り交じったもの。)が向かっているので、これだけ熊痕があるし、見つけているのに遭わない。
熊の感受性、警戒センサー、隠密性は本当に凄いものだ。
今日は諦めて下山し、途中の陽の当たる気持ち良い空き地でヘルメットとプロテクター、鉈を外し、ドライ系ロンTを脱いで裸になる。 山の涼しい風が快適、森の間に関川方面の山腹が望める。
冷やしていた冷水を飲んで息を着き、山に手を合わせて今日の無事を感謝した。 さて、帰宅してシャワーで汗を流そう。
少し休憩して、木曜からの1週間に備えよう。