オムライスは恋の味の記憶。
今日、スタッフの賄いにオムライスを作っていた時、長年の友人のYを思い出しました。
僕はスーツ着て営業をする会社員を経て30歳前に料理の世界へ飛び込んだので、昔からの友人は全員が会社員や自営業者で、料理人は一人もいません。
学生時代からの友人Yもそんな一人です。
Yが会社員になり、30前に出会った素敵な女性とより深く仲良くなりたいと思ったのですが、映画鑑賞、ドライブ、都心デートなど一般的なデートは浮かんでも、他の余り良いデートプランが思い浮かびませんでした。
そんな悩んでいた時、以前彼女さんが話していた「好きな食べ物はオムライス」の言葉を思い出し、ハッと「そうだ、一生懸命作ったオムライスを食べてもらおう」と考えました。
料理は殆どしないYでしたが、それから懸命にオムライスの作り方だけ勉強し何度か実践し、思い切ってある日彼女を彼の一人暮らしの小さな部屋に招待し、下手ながらも真剣に作ったチキンオムライスをご馳走しました。
彼女さんは大変喜び、それが一つの機会になってYとのお付き合いが始まりました。
二人はその後数年して、婚姻届を出すには至らずお別れしましたが、二人の関係は幸せな思い出に溢れた良いものだったそうです。Yにとっても彼の相談をオンタイムで聞いていた僕にとっても、オムライスは甘く苦い恋の味のする料理となりました。
今、僕がオムライスを作るのはオムライスを喜んでくれるスタッフの為で自分独りの為に作る事は無いのですが、「誰かの為に作るオムライス」という構図はYと全く同じです。
今日のオムライスも「美味しい」と喜んでもらいました。今も昔も僕らにとって、オムライスは恋(愛?)の味です。
さて、本日のご来店も本当にありがとうございました。